すてきな天使のいる夜に〜2nd Sstory〜
ーside 冨山ー
沙奈の様子を見に行こうとすると、歩くことが難しいはずの沙奈は、今にも転んでしまいそうな足取りで、勢いよく病室から飛び出して来た。
飛び出してきた勢いで、すぐに俺が沙奈を抱きとめて動きを止めることが出来たけど、あのまま知らずに沙奈を1人にしていたら、きっと危ない状態に逆戻りだった。
きっと、病室だと何かを思い出してしまうと感じ、沙奈をなるべく病室の環境と離れた仮眠室へ連れて行った。
俺の白衣を握りしめ、離れようとしない沙奈。
こんな様子、初めて見る。
こんなに泣いていたのでさえ、初めて見た。
沙奈が俺の家に来た時から、泣いてるところも怒っているところも見たことがなかった。
まるで人形のように、表情1つ変えず喋ることも無く膝を抱えて部屋の片隅に座り込んでいたから。
だから、あんなに感情をむき出しにした沙奈の姿を見るのが初めてだった。
やっと、思いっきり泣くことができたんだな。
「沙奈。
辛い時や、苦しい時は無理に涙を押し込めなくてもいい。
自分が、壊れてしまうからな。
ここは誰も来ないから、沙奈の気が済むまで安心して泣いていいぞ。」
こんなに小さな体で、たくさん傷つけられ、いっぱい考えて1人でよくここまで頑張って来たと思う。
きっと沙奈がしてきた経験は、大人でさえも耐えきれないだろう。
それなのに、こんなに小さな体で不安定な心で本当によく頑張ったと思う。
「冨山さん。
私、なんであんな人と血が繋がってるの?
私、あの人と一緒なの?
私、もうやだよ…。
あの人との繋がりのせいで、いつまで私は苦しまないといけないの?
なんで私ばかり、こんなに苦しい思いしないといけないの?
なんで…。
酷い…。本当、こんなの酷いよ…。」
今にも崩れ壊れてしまう沙奈を、優しく抱きしめることしか出来なかった。
その悔しさのあまりに、俺は唇を噛み締めていた。
ずっと、我慢していたんだろう。
小さい子供をあやす様に、規則正しく沙奈の背中を叩いていると、沙奈は少しずつ落ち着きを取り戻していた。
「冨山さん…。
ごめんなさい、私…。」
「謝ることはない。」
俯く沙奈の顎をすくい、視線を合わせた。
泣いた後だから余計に、潤んだ瞳がやけに色っぽくて、理性を吹き飛ばされそうになったけどなんとかこらえることができた。
今は、そんな場合でもない。
「泣いて、少しはスッキリできたか?」
「うん。
冨山さんは聞かないの?
何があったのかって。」
そう言って、俺から視線を外し、うつむき加減で沙奈は肩まである綺麗な髪を耳にかけた。
この耳に髪をかける仕草は、小さい頃からの癖で、何か不安なことがあったりする時に見られる。
本人は気づいていないのかもしれないけど。
俺が、話を聞いてこないか不安になっているのかもしれないな。
きっと、それくらい今は何も触れてほしくないんだろうな。
「沙奈のタイミングでいいんだよ。
きっとまだ、心の中で何も整理できてないんだろうから。
そんな状態で話せなんて言わないから安心していいよ。」
沙奈の気持ちをここまで乱していることや、さっきの沙奈の言動から、きっと今日沙奈の過去に関することで何かあったのだろうか。
今は、無理に話さなくていいとは言ったものの、注意深く観察していく必要はある。
これからは、俺も前よりもっと沙奈から目を離さないようにしよう。
あの時、未熟だった俺は沙奈を守ることが出来なかった。
だから、今は沙奈が二度と深い闇に落ちていかないように、支えていきたいと思う。
沙奈の様子を見に行こうとすると、歩くことが難しいはずの沙奈は、今にも転んでしまいそうな足取りで、勢いよく病室から飛び出して来た。
飛び出してきた勢いで、すぐに俺が沙奈を抱きとめて動きを止めることが出来たけど、あのまま知らずに沙奈を1人にしていたら、きっと危ない状態に逆戻りだった。
きっと、病室だと何かを思い出してしまうと感じ、沙奈をなるべく病室の環境と離れた仮眠室へ連れて行った。
俺の白衣を握りしめ、離れようとしない沙奈。
こんな様子、初めて見る。
こんなに泣いていたのでさえ、初めて見た。
沙奈が俺の家に来た時から、泣いてるところも怒っているところも見たことがなかった。
まるで人形のように、表情1つ変えず喋ることも無く膝を抱えて部屋の片隅に座り込んでいたから。
だから、あんなに感情をむき出しにした沙奈の姿を見るのが初めてだった。
やっと、思いっきり泣くことができたんだな。
「沙奈。
辛い時や、苦しい時は無理に涙を押し込めなくてもいい。
自分が、壊れてしまうからな。
ここは誰も来ないから、沙奈の気が済むまで安心して泣いていいぞ。」
こんなに小さな体で、たくさん傷つけられ、いっぱい考えて1人でよくここまで頑張って来たと思う。
きっと沙奈がしてきた経験は、大人でさえも耐えきれないだろう。
それなのに、こんなに小さな体で不安定な心で本当によく頑張ったと思う。
「冨山さん。
私、なんであんな人と血が繋がってるの?
私、あの人と一緒なの?
私、もうやだよ…。
あの人との繋がりのせいで、いつまで私は苦しまないといけないの?
なんで私ばかり、こんなに苦しい思いしないといけないの?
なんで…。
酷い…。本当、こんなの酷いよ…。」
今にも崩れ壊れてしまう沙奈を、優しく抱きしめることしか出来なかった。
その悔しさのあまりに、俺は唇を噛み締めていた。
ずっと、我慢していたんだろう。
小さい子供をあやす様に、規則正しく沙奈の背中を叩いていると、沙奈は少しずつ落ち着きを取り戻していた。
「冨山さん…。
ごめんなさい、私…。」
「謝ることはない。」
俯く沙奈の顎をすくい、視線を合わせた。
泣いた後だから余計に、潤んだ瞳がやけに色っぽくて、理性を吹き飛ばされそうになったけどなんとかこらえることができた。
今は、そんな場合でもない。
「泣いて、少しはスッキリできたか?」
「うん。
冨山さんは聞かないの?
何があったのかって。」
そう言って、俺から視線を外し、うつむき加減で沙奈は肩まである綺麗な髪を耳にかけた。
この耳に髪をかける仕草は、小さい頃からの癖で、何か不安なことがあったりする時に見られる。
本人は気づいていないのかもしれないけど。
俺が、話を聞いてこないか不安になっているのかもしれないな。
きっと、それくらい今は何も触れてほしくないんだろうな。
「沙奈のタイミングでいいんだよ。
きっとまだ、心の中で何も整理できてないんだろうから。
そんな状態で話せなんて言わないから安心していいよ。」
沙奈の気持ちをここまで乱していることや、さっきの沙奈の言動から、きっと今日沙奈の過去に関することで何かあったのだろうか。
今は、無理に話さなくていいとは言ったものの、注意深く観察していく必要はある。
これからは、俺も前よりもっと沙奈から目を離さないようにしよう。
あの時、未熟だった俺は沙奈を守ることが出来なかった。
だから、今は沙奈が二度と深い闇に落ちていかないように、支えていきたいと思う。