すてきな天使のいる夜に〜2nd Sstory〜
ーside 大翔ー



迂闊だった…。



俺の言葉が、沙奈を追い詰めてしまった。




俺は、何してるんだ…。




大切な人の、気持ちを汲み取ることが出来ないなんて…。



医者なんて言えるのか?



今日あった出来事を、紫苑と翔太へ話した。



「ごめん、大翔。


俺から、何があったのかちゃんと沙奈に聞くから。」




「紫苑、今はやめておいた方がいい。


俺が、無理に話を聞こうとしたら沙奈は余計に塞ぎ込んでしまったんだ。


あんな切ない表情、出会った頃以来だった。


あまりにも寂しそうにしていたから…。



放っておけない気持ちと、何があったのか知りたい気持ちが先走ってしまい沙奈のこと傷つけてしまった。



本当に、申し訳ない。」




「大翔は、悪くない。


もちろん、沙奈も。


俺も、勝手に沙奈の精神状態が安定していると思い込んでいたのも悪かったんだ。



過去のことを聞くことが出来たから、夢を見つけることができたからといって、完全に過去から自分を解放したと思い込んでしまった。



時間をかけて、話を聞いてみようと思う。」




「それで、沙奈は今どこへ?」




「冨山さんと一緒に、仮眠室にいる。」




正直、今沙奈に会いたい気持ちが強い。



あんなに感情を表に出した姿は初めて見た。



本当は沙奈の傍にいたい。



だけど、沙奈を追い詰めてしまったのも事実で、自分が今沙奈に近づくことで余計に傷つけてしまうような気がした。



嫌われるようなことはしたくない。



紫苑の言った通り、俺も勝手に沙奈の精神状態が安定していると思っていたことが迂闊だった。




ちゃんと沙奈のことを見ていたと思っていたけど、沙奈のこと見れてなかったのかもしれない。




それからしばらくして、冨山さんに抱かれた沙奈が病室へ戻ってきた。




安心したかのように、穏やかな表情で眠る沙奈を見て、一安心した。



「冨山さん、ありがとう。」




「いえ。


大翔先生。少し、この子に時間をあげてください。


きっと彼女は、心の中で整理がついていないんだと思います。



それに、安心しました。



沙奈が、誰かにあんなに感情を外に出したのは初めてだったんです。



それって、大翔先生のことをしっかり沙奈の中で信頼できる人と認識してるって事だと思うんです。



俺も、しっかりしないといけませんね。」




冨山さんでさえも、初めて見る姿だったのか。



そうだとしたら、沙奈はずっと前から心がいっぱいいっぱいになっていたんだな。
< 14 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop