すてきな天使のいる夜に〜2nd Sstory〜
病院を後にしてからも、中々家へ帰りたくなくて、私はお気に入りの場所の1つである浜辺へ向かっていた。
2人に話してみるとは言ったものの、何だか気が引ける。
だけど、諦めたくなかった。
それなら、ちゃんと話さないといけないよね。
そのループから抜け出せず、日か沈むまで私は月の光に照らされてキラキラと輝いている海を眺めていた。
「沙奈、何してるんだ。」
「翔太。」
「早く帰らないと、紫苑が心配するよ。
それに、まだ制服ってことは病院から真っ直ぐここに来たのか?」
「そうだけど…。」
「沙奈。
何か、あったのか?」
翔太はそう言って、私の隣に腰を降ろした。
「悩み事があるなら、話してほしい。
沙奈の悩みは、俺の悩みでもあるんだから一緒に解決したい。」
「翔太、あのね。
私、悩んでることがあるの。」
「もしかして、進路のことか?」
「えっ?」
私は、驚きのあまり翔太の顔を見ていた。
何も言ってないのに、何で分かったんだろう。
「紫苑が言ってたんだ。
最近、紫苑と進路の話をしただろう?
その時、沙奈は就職するって言ったんだよな。
だけど、紫苑はそれが沙奈の本心じゃないって言ってたんだ。
あの時、沙奈はなりたいものがないって言ったみたいだけど、それは違うんじゃないのかなって話していたんだ。
沙奈。俺も本当は薄らだけど気づいていたんだ。
なりたいもの、将来の夢が見つかったんじゃないのか?」
やっぱり、紫苑や翔太に隠し事をしようとしても無理だよね。
2人は超能力者並に、私の心の中を読みとる力があって本当にすごいと思う。
私も、いつかそうなれるだろうか。
「やっぱり、紫苑と翔太には分かっちゃうよね。
私ね、なりたいものが見つかったの。
紫苑や翔太、大翔先生と出会って私の人生は変わった。
みんなにこの命、救ってもらった。
紫苑や翔太がしてくれたように、私も誰かの心に寄り添っていきたいと思ったの。
辛い思いや、苦しい思いをしている人の助けになりたいの。
だからね、私心の治療を専門とする医者になりたい。
医者になったら、心だけじゃなくて人の命も救えるよね?」
紫苑や翔太、大翔先生と出会ってから心の治療を私もしていきたいと思っていた。
その気持ちと一緒に、自分が病気になって入院をしていて、病気を治すために治療やリハビリに取り組んでいる人達を見てきて、私も何かの形で関わっていきたいと思った。
ずっと当たり前のように生きていたことが、本当は当たり前じゃなくて奇跡なんだと何度も思った。
一時は、命を失ってもいいと思っていた。
だけど、今は人の命は儚くて尊いものだと感じている。
だからこそ、その尊い命を私も救うことができる人になりたい。
医者になれば、その願いが叶うかな。