すてきな天使のいる夜に〜2nd Sstory〜
「紫苑、ただいま。」
「沙奈、翔太。おかえり。
沙奈、随分帰りが遅かったな。」
「沙奈、浜辺にいたんだ。」
「浜辺?」
紫苑は、料理をしていた手を止めて私の身体に触れた。
「結構、体が冷えてるな。
大丈夫とは思うけど、体温測って。
長時間、浜辺にいたのか?」
私は、部屋着に着替えてから紫苑の言われた通りに体温を測った。
「35℃丁度か。
沙奈、何か悩み事でもあったのか?」
「うん…。」
私は、昔から悩み事があると浜辺へ向かい時間を忘れる程、海を眺めている。
「翔太は、話を聞いたのか?」
「うん。帰ってきた時沙奈が家にいなかったから、もしかしたら浜辺にいるのかなって思って向かったんだ。
その時に、沙奈の話を聞いた。」
「紫苑、話してもいい?」
私は、紫苑に話すことを決めた。
「いいよ。こっちにおいで。」
紫苑は、ソファーに座り私も隣に座った。
「私ね、心の治療を専門とする医者になりたいの。
私、高校に入学したばかりの頃は特になりたい夢とかもなかったから早く就職して、2人に恩返しをしたいと思ってたの。
だけど、紫苑や翔太と過去の話をした時からこうやって誰かのために話を聞いたり解決してくれる紫苑や翔太のようになりたいの。
それに、病気が見つかって入院した時にも大翔先生や2人にいっぱい助けられた。
病気の治療やリハビリを頑張ってる人達をたくさん見てきた。
私も、いつか誰かのために頑張ることの出来る人になりたい。
誰かの救いになりたいの。」
「分かった。
話してくれてありがとう。
俺は沙奈の夢を応援する。」
「ありがとう。」
「よし!そうしたらまず大学に進むこと。
医大は、6年間通うから絶対妥協せずに自分に合った場所で学ぶといいよ。
沙奈、ちょっと厳しいことを言うけど、医大は偏差値の高いんだ。
普通の大学よりも、遥かに勉強を頑張らないといけない。
沙奈、俺と翔太も出来ることはするから一緒に頑張って行こう。」
「うん。
難しいことは分かってる。
だけど、諦めたくない。」
高3の、4月に大学受験の準備を始めるのは遅い。
紫苑の言った通り、医者になるくらいだから医大は偏差値が高いし、よっぽど頑張らないといけない。
発作のコントロールをしながら、私は頑張ることができるだろうか。
「沙奈。沙奈は1人じゃないから大丈夫だよ。
少しだけ、壁が高いかもしれないけど日々の積み重ねが大切なんだ。
勉強は、一気にやろうとしなくていいからな。」
私の不安な表情を読み取り、紫苑はそう言った。
「頑張ることも大切だけど、頑張りすぎて沙奈が倒れたりしたら、本末転倒だしな。
自分の体を休めながら、沙奈なりの勉強法を見つけるといいよ。
幸い、沙奈は頭もいいし効率のいい勉強の仕方を知っている。
そうじゃないと、あの高校で1番トップクラスには入れていないと思うんだ。」
私は、2年生の冬にとったアンケートで特別進学を希望していなかったのに、何故か特別進学クラスに選ばれてしまった。
後々先生に聞いたら、私が本当に就職の道に進みたいとは思っていなかったと感じ取ったらしい。
「あなたが、本当に就職の道に進みたいって考えているのであれば、就職コースのクラスに入ることを勧める。
だけど、今は違うと思うのよ。
本当は、やりたいこと何か見つかったんじゃない?
今からでも遅くはないわ。
幸い、あなたは学力的にもトップの方だから特別進学クラスに入れると思うの。」
たしか、先生はそう言って校長先生や学年主任と話し合って私を特別進学クラスに勧めてくれた。
「ありがとう、紫苑。翔太。
私、自分のペースで頑張って行こうと思う。」
「それでこそ、俺の妹だな。」
笑顔で翔太は、私の頭に手を乗せた。
「よし、じゃあ夜ご飯にしようか。」
再び、紫苑はキッチンへと向かい料理をリビングへと運び、いつものように3人で食事を摂った。