すてきな天使のいる夜に〜2nd Sstory〜
ーside 大翔ー
今日は当直だった。
いつものように、軽く仮眠を取り救急外来へ戻ると、聞きたくもなかった知らせが俺の耳に入った。
「七瀬沙奈さん。17歳女性。
心臓が止まりかけ、心臓マッサージをしています。
喘息の発作も出ていたようですが受け入れは可能ですか?」
俺は、しばらく何も考えられなくなって放心状態だった。
そんな俺を見ていた冨山さんが、変わりに救急隊員へ伝えてくれた。
「急いで運んで下さい。
大翔先生!しっかりして下さい。
沙奈、命の瀬戸際にいるんですよ!
あなたが、しっかりしないでどうするんです!
沙奈を救えるのは私じゃない。
あなたしかいないんですよ!」
冨山さんに、強く言われ俺はやっと冷静になることが出来た。
「ソルデム1A、ドプポン、ヘパリン1万単位と、挿管の準備と酸素投与の準備。急いで!」
俺の言葉に、近くにいた看護師たちは急いで準備を始めた。
頼む、何とかここまで持ってくれ。
心停止してから、時間が経つにつれ可能性は低くなる。
1秒でも早く運ばれてくることを祈る。
沙奈は、10分もしない間に運ばれてきた。
ストレッチャーに横たわる沙奈の上で馬乗りになりながら、紫苑は心臓マッサージを続けてくれていた。
「血圧とサチュレーションが測れない。
洞不全症候群の発作と、喘息の発作が同時に起きたと思う。
急いで蘇生だ。」
その場にいた紫苑が、的確に状況を把握し俺に伝えてくれた。
相当まずい状況だったけど、何とか沙奈の心臓は回復した。
でも、意識は戻らずこのまま亡くなってしまう可能性も高かった。
今夜が峠だと判断した。
「大翔、ありがとう。
しばらくは、俺が沙奈の傍にいるから仕事に戻って。」
「ごめん。沙奈の傍にいたいんだ。」
何で、沙奈ばかり辛い思いをしなければいけないんだ。
何も悪いことなんてしてないだろう。
この世の中はやっぱり、善人が損をするように出来ているのか?
頑張っている人は報われないのか?
「何で…。
やっと、前を向いて頑張ろうとしてたのに。」
泣き崩れる翔太。
それを、受け止める紫苑。
「誰も、悪くない。
病気が悪いんだ。
沙奈、戻ってこい。必ず戻ってこい。」
小さな沙奈の身体は、たくさんの管に繋がれていた。
血圧も、70台。
尿もほとんど出ていない。
挿管チューブからは、溢れるほどの痰も出ている。
鎮静をかなりかけているから、吸引をしても沙奈の表情は変わることがなかった。
そして、顔色も青白いままだった。
胸が、締め付けられているように苦しく息が出来なかった。
「沙奈、沙奈!頼む。
戻ってきてくれ!
俺、沙奈のためなら何だってするから。
だから、頼む。沙奈、また天使のような笑顔を見せてくれ。」
沙奈の手を握り、俺はそう言うことしか出来なかった。
できる治療は全てやり尽くした。
心臓マッサージから、沙奈の肋骨は何本か折れていた。
挿管する時だって、相当苦しかったはずだ。
こんなに、小さい体に負担をかけているのに命を落としてしまったら、俺は立ち直ることは出来ないだろう。
それ以前に、沙奈を失うことが震えるほどに怖かった。
全てのことをやり尽くし、今は沙奈の生命力に託すしかなかった。
今日は当直だった。
いつものように、軽く仮眠を取り救急外来へ戻ると、聞きたくもなかった知らせが俺の耳に入った。
「七瀬沙奈さん。17歳女性。
心臓が止まりかけ、心臓マッサージをしています。
喘息の発作も出ていたようですが受け入れは可能ですか?」
俺は、しばらく何も考えられなくなって放心状態だった。
そんな俺を見ていた冨山さんが、変わりに救急隊員へ伝えてくれた。
「急いで運んで下さい。
大翔先生!しっかりして下さい。
沙奈、命の瀬戸際にいるんですよ!
あなたが、しっかりしないでどうするんです!
沙奈を救えるのは私じゃない。
あなたしかいないんですよ!」
冨山さんに、強く言われ俺はやっと冷静になることが出来た。
「ソルデム1A、ドプポン、ヘパリン1万単位と、挿管の準備と酸素投与の準備。急いで!」
俺の言葉に、近くにいた看護師たちは急いで準備を始めた。
頼む、何とかここまで持ってくれ。
心停止してから、時間が経つにつれ可能性は低くなる。
1秒でも早く運ばれてくることを祈る。
沙奈は、10分もしない間に運ばれてきた。
ストレッチャーに横たわる沙奈の上で馬乗りになりながら、紫苑は心臓マッサージを続けてくれていた。
「血圧とサチュレーションが測れない。
洞不全症候群の発作と、喘息の発作が同時に起きたと思う。
急いで蘇生だ。」
その場にいた紫苑が、的確に状況を把握し俺に伝えてくれた。
相当まずい状況だったけど、何とか沙奈の心臓は回復した。
でも、意識は戻らずこのまま亡くなってしまう可能性も高かった。
今夜が峠だと判断した。
「大翔、ありがとう。
しばらくは、俺が沙奈の傍にいるから仕事に戻って。」
「ごめん。沙奈の傍にいたいんだ。」
何で、沙奈ばかり辛い思いをしなければいけないんだ。
何も悪いことなんてしてないだろう。
この世の中はやっぱり、善人が損をするように出来ているのか?
頑張っている人は報われないのか?
「何で…。
やっと、前を向いて頑張ろうとしてたのに。」
泣き崩れる翔太。
それを、受け止める紫苑。
「誰も、悪くない。
病気が悪いんだ。
沙奈、戻ってこい。必ず戻ってこい。」
小さな沙奈の身体は、たくさんの管に繋がれていた。
血圧も、70台。
尿もほとんど出ていない。
挿管チューブからは、溢れるほどの痰も出ている。
鎮静をかなりかけているから、吸引をしても沙奈の表情は変わることがなかった。
そして、顔色も青白いままだった。
胸が、締め付けられているように苦しく息が出来なかった。
「沙奈、沙奈!頼む。
戻ってきてくれ!
俺、沙奈のためなら何だってするから。
だから、頼む。沙奈、また天使のような笑顔を見せてくれ。」
沙奈の手を握り、俺はそう言うことしか出来なかった。
できる治療は全てやり尽くした。
心臓マッサージから、沙奈の肋骨は何本か折れていた。
挿管する時だって、相当苦しかったはずだ。
こんなに、小さい体に負担をかけているのに命を落としてしまったら、俺は立ち直ることは出来ないだろう。
それ以前に、沙奈を失うことが震えるほどに怖かった。
全てのことをやり尽くし、今は沙奈の生命力に託すしかなかった。