すてきな天使のいる夜に〜2nd Sstory〜
それから、沙奈が眠り続けて1ヶ月が経っていた。
いつものように、俺は沙奈の診察に向かうと沙奈に小さな変化が見られていた。
「先生、血液検査の結果が…。」
「沙奈…。」
倒れた時から昨日まで、血液の中を流れている酸素分圧が同じようだったのにも関わらず、冨山さんから朝にとった採血の血液データーを見せられ思わず沙奈の体を揺すった。
血液データーが、想像以上に良くなっていた。
もしかしたら、そろそろ目を覚ますかもしれない。
そう思ったら、いても経ってもいられず沙奈に声をかけていた。
それから間もなく、沙奈はゆっくりと目を開いた。
「沙奈!」
沙奈は、俺の表情を見るなり手を頑張って動かしていた。
それに応えるかのように俺も沙奈の小さな手を握った。
沙奈は、少しだけ笑顔になった。
急いで、紫苑と翔太に連絡をした。
2人はすぐにこちらへ来てくれた。
「沙奈!」
「沙奈、分かるか?」
紫苑と、翔太を順番に見つめ沙奈は目を細め小さく頷いた。
「良かった…。
本当に良かった…。」
始めてみる、紫苑の泣き崩れる姿。
翔太も沙奈の手を握りながら泣き崩れていた。
俺は、そんな2人の間に入り2人の肩を自分へ引き寄せた。
「血液検査の結果からも、呼吸状態も大丈夫だろう。抜管しようか。」
意識が戻り、呼吸は微弱とはいえ自発呼吸がある。
自分の意思とは関係なく、機械に繋がれ呼吸を無理矢理されていたら余計に苦しいだろう。
挿管チューブを外し、沙奈は少しずつ意識もはっきりとしてきた。
両肺の音も、微かにまだ雑音は聞こえているが運ばれてきた時ほどでは無くなっていた。
だけど、モニター上は何回も心拍数の低下があって、それが何よりも心配だった。
「沙奈、声出せるか?」
「うん。出せる。」
管が刺激になっていたせいか、声が少しだけかすれていた。
「紫苑、翔太…。」
「どうした?」
「ごめん…ね、いっぱい…心配…かけちゃったね。」
泣いてる2人を見て、沙奈はそう話した。
挿管チューブを抜管したばかりだからか、沙奈はやっと声を出している様子だった。
「いいんだ。いいんだよ、沙奈。
心配くらいさせてくれ。
生きていてさえくれてればそれだけでいいんだよ。」
紫苑の言う通りだ。
生きていてくれるだけいい。
意識も戻ってきてよかった。
あんなにも、生きた心地がしなかったのは初めてだった。
きっと、こんなにも誰かが愛おしくて、大切に思ったりできるのはきっとこの先も沙奈しかいないだろう。
沙奈を目の当たりにすると、冷静でいられなくなる自分がいる。
しっかりと繋いだ手を、絶対に離したくない。
この小さくて尊い命は、俺が一生かけて守っていく。
いままでも、これからも。