毒蝶
0日目
不安そうな、そして何かに怯えているような目をして見上げてくる彼女に、優しく笑いかける。


「君のことは、僕が守るよ」


その言葉に嘘はなかった。


そして僕は彼女を家に連れていくことにした。


なんでも、彼女が前に付き合っていた男はとんでもない男だったらしく、彼女には傷跡やあざがいくつかあった。


あのまま外にいれば、男に見つかってまた暴行されるかもしれない。
だから、僕がしたことは正しいんだ。
誘拐なんかじゃない。


彼女は僕と同い年か少し年上に見えたけど、僕についてくる様子は子供のようだった。


彼女は道端で倒れていた。
もう肌寒くなっているのに、ワンピースのような薄着でいた。


そんなところを見て、無視なんてできるわけがない。


声をかけ、少し話を聞いて、僕は彼女に言ったのだ。
僕が守る、と。


守ってあげたくなった。
この世のすべてに怯え、僕しか頼る人がいないというような目で見られると、手を差し伸べたくなった。


決して、彼女といい関係になりたいとか、そういったやましい気持ちはない。


これは、人助けなんだ。
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