毒蝶
自分の料理で好きな人が喜んでくれると幸せになるということは、僕も知っている。


ルナも、そうしたいのだろうか。


「じゃあ僕はここで見てるよ」


それでもルナは納得してくれない。


「……ダメ?」
「仕方ないなあ」


ルナはそう言って料理を再開した。


手際がいい。
慣れてるんだな。


こうやって、前の男にもご飯を作っていたのか。


そう思うと、なんだかムカついてくる。


僕はルナを後ろから抱きしめる。


「……どうしたの?」


嫉妬したなんて格好悪いことは言えなくて、僕はただ強くルナを抱きしめた。


「逞?」


その可愛い声で、他の男の名前を呼んでいたのだろうか。


「……わかった、キスだ」


ルナは少しだけ振り向いてキスをしてきた。


ルナの唇を知っているのも、僕だけじゃない。
甘い匂いも、甘い声も。


もう、嫉妬でくるってしまいそうだ。


それを隠したくて、僕は夢中でルナとキスをした。


「もう、どうしたの、逞」
「……ルナは、僕のものだよね」


会話が成り立っていないことはわかってる。
女々しいことを言っていることもわかってる。


でも、こんなことを聞いてしまうくらい、僕は不安だった。


ルナは僕の頬にそっと触れる。


「……もちろん」
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