毒蝶
ルナは僕の不安を感じ取ったのかもしれない。
でないと、こんなふうに言ってくれるはずがない。


誤魔化さないと。
これ以上、ルナを困らせるわけにはいかない。


僕はゆっくりとルナから離れる。


何か、新しい話題はないか。
このままだと、気まずい空気が続いてしまう。


せっかくルナが僕にご飯を作ってくれているのに、それだけは嫌だ。


そう思ったのに、何の話題にしても同じことの繰り返しになるような気がして、結局黙ってしまった。


ルナからしてみれば、邪魔がなくなったようなものだろうから、鼻歌をうたいながら作っている。


ダメだ、可愛すぎる。
大人しく離れて待っておこう。


ローテーブルのそばに座っていたら、美味しそうな匂いがしてきた。
これだけでもお腹が空いてくる。


僕のお腹は、催促するかのように大きな音を出した。


キッチンからルナの笑い声が聞こえてくる。


これは恥ずかしい。


「もうすぐできるから、楽しみにしてて」
「う、うん……」


それから数分もしないうちに、完成したハンバーグが運ばれてきた。
本当においしそうだ。


「いただきます」


僕がそれを口に運び、飲み込むところをルナはじっと見つめてきた。


「おいしい!お店の味みたいだ」


素直に言うとルナは照れ臭そうに笑っていた。
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