毒蝶
「今どきの警察ってもっと使えないのかと思ってた」


その笑みは不気味と言うに相応しかった。


「……どういう意味ですか」


柴崎が言うと、黒瀬彩羽は柴崎の耳元に顔を寄せた。


「五人殺さないと私にたどり着けなかったじゃない」


背筋が凍った。
柴崎は黒瀬彩羽から距離をとる。


「柿川海人、村雨慎二、真鍋和臣、柳康太、佐野逞を殺したのはお前か」


確認をすると、黒瀬彩羽はくすくすと笑う。


「正解。でもそんな怖い顔しないで?せっかくの可愛い顔が台無し」


黒瀬彩羽の手が伸びてきても、柴崎は動けなかった。


しかし繁田がその手首を掴んだ。


「……署までご同行願う」


黒瀬彩羽は抵抗することなく、車に乗り込んだ。





私は小さい頃から父親に暴力を振るわれていた。


上から押さえつけられて。
理不尽な理由で殴られて。


段々痛みを感じなくなった。


でも殴られたりすることで、安心している自分がいた。


それが最近になって、父親に飽きて、他の男に殴られたりしたら、どれだけ気持ちがいいんだろうって思うようになった。


だから、父親の元から逃げた。


男を釣るのは簡単だった。


独占欲を煽って、殴られるのも簡単だった。
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