毒蝶
ゲームみたいで楽しかった。


でもすぐに飽きて、乗り換えようとした。


けど逃がしてくれなさそうだったし、逃げれたとしても追いかけられそうだったから、殺した。


最初はすぐ殴ってくれそうな人を捕まえてたけど、なんだかつまらなくなって。


だから、逞みたいな真面目そうな人を選んだ。
そういう人の独占欲は強そうだって思ったから。


途中まではいい感じだったけど、頬を叩いただけで、逞は後悔した顔をしていた。


それで察した。


ああ、この人は私が望むものを与えてくれないんだなって。


だから、すぐに殺した。


ずっとどの部屋にも私の痕跡は残さないようにしてたのに……そっか、日記か。
逞らしい。


あ、偽名?
別に深い意味はないけど……本名が好きじゃなかったから。


暴力で押さえつけてくる父親と、その父親を選んだ母親から与えられた名前なんて、使いたくなかっただけ。





「殴られたいとか、逃げるために殺すとか……黒瀬の話を聞いていたら、気が狂いそうです」


取り調べを終えた柴崎は、心底疲れた顔をしていた。


「殺人犯の気持ちなんて理解できやしないんだから、そういうもんだって割り切れよ」


繁田は自販機でコーヒーを買う。
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