毒蝶
彼女は笑っている。
今の言葉が嘘ではないとわかるくらいの笑顔だ。
僕は起き上がり、また彼女を寝かせる。
「……もう止められないけど、いい?」
「……うん」
そして日付けが変わるまで、僕たちはお互いを求めた。
◇
「……ねえ、名前教えてよ。僕、君の名前を呼びたい」
僕の腕を枕にしている彼女に言ってみる。
彼女は、出会ってから今日まで、名前を教えてくれなかった。
自分が教えないのに聞くのはおかしいからと、彼女は僕の名前も聞かなかった。
しかし彼女は申しわけなさそうな顔をする。
「……教えられない理由でもあるの?」
まだ、口を閉じたまま。
「名前を呼びたいし、呼んでほしいって思ってるのは、僕だけなんだね」
ずるいことをしている自覚はある。
これを少し悲しそうに言えば、教えてくれるのではないかと思った。
「……ルナ」
小さな声だったけど、確かに聞こえた。
「ルナ」
ルナの髪に指を通して、そっと呼ぶ。
ルナはやっと僕の顔を見て笑ってくれた。
「僕は」
僕の名前を教えようとすると、ルナは人差し指を僕の唇に当てた。
「……逞、でしょ?」
「知ってたの?」
教えたことはないのに名前を当てられて、喜ぶよりも先に、素直に驚いた。
今の言葉が嘘ではないとわかるくらいの笑顔だ。
僕は起き上がり、また彼女を寝かせる。
「……もう止められないけど、いい?」
「……うん」
そして日付けが変わるまで、僕たちはお互いを求めた。
◇
「……ねえ、名前教えてよ。僕、君の名前を呼びたい」
僕の腕を枕にしている彼女に言ってみる。
彼女は、出会ってから今日まで、名前を教えてくれなかった。
自分が教えないのに聞くのはおかしいからと、彼女は僕の名前も聞かなかった。
しかし彼女は申しわけなさそうな顔をする。
「……教えられない理由でもあるの?」
まだ、口を閉じたまま。
「名前を呼びたいし、呼んでほしいって思ってるのは、僕だけなんだね」
ずるいことをしている自覚はある。
これを少し悲しそうに言えば、教えてくれるのではないかと思った。
「……ルナ」
小さな声だったけど、確かに聞こえた。
「ルナ」
ルナの髪に指を通して、そっと呼ぶ。
ルナはやっと僕の顔を見て笑ってくれた。
「僕は」
僕の名前を教えようとすると、ルナは人差し指を僕の唇に当てた。
「……逞、でしょ?」
「知ってたの?」
教えたことはないのに名前を当てられて、喜ぶよりも先に、素直に驚いた。