毒蝶
10日目
その日、買い物から帰っても、ルナが出迎えてくれなかった。


「ルナ?いないのか?」


部屋の中を探しても、見つからない。


ルナも出かけたのか?
あれだけ怖がっていたのに?


まさか、誰かに連れ去られた?
いやいや、過去の男たちは僕の家を知らない。
誘拐なんてありえないだろう。


……でも、鍵は開いていた。
ないとは言い切れないか。


もしくは、ルナが自分から出て行った?
ここの居心地が悪くなったのだとしたら。


これが一番あり得る話だ。


「ルナ!どこにいる!」


少しずつ不安になってきて、僕の声は大きくなっていく。


外に出てあたりを見渡すけど、ルナがどこにいったのかなんてわからなくて、動けなかった。


「……逞」


物陰からルナの声がした。
ルナの姿を見た途端、僕の体は勝手に動いた。


ルナを強く抱きしめる。


「ルナ……何もなくてよかった……」


ルナは僕の背に手を回す。


「……家に、入ろうか」


聞きたいことはいっぱいあった。
でも、まずはルナがここにいることを確かめたくて、僕はそう言った。


ルナの手を引いて、家の中に入る。
ドアが閉まると同時に、僕はルナに口づけをした。
少し乱暴になってしまったのに、ルナは僕に応えてくれた。
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