毒蝶



「それで、ルナ。どこに行っていたんだ」


僕の腕の中で眠ろうとするルナに尋ねる。
といっても、優しく聞く余裕なんてなくて、責めるような言い方をしてしまった。


ルナは僕のほうを見てくれない。


「……逞と買い物、行きたくなって……追いかけたんだけど……」


ルナは小さな声で説明していく。



出て行ったわけじゃなかった。
連れ去られたわけでもなかった。


ただ、僕を追いかけてくれただけ。


そう思うと嬉しくて、僕はルナの口を口で塞いだ。


「……ひどい言い方してごめん。少し、不安になってたというか……」
「ううん……私のほうこそ、黙って出かけてごめん……」


ルナはまた僕から顔を背けた。
怖がらせてしまっただろうか。


安心させたくて、僕はルナの髪を撫でる。


「ルナ……僕はもう、君なしでは生きていけないみたいだ……」


出会って十日ほどしか経っていないのに、こんなことを言っても信じてもらえないかもしれない。
実際、自分でもこれほどまでルナに堕ちているとは思っていなかった。


「嬉しい……」


だけど、ルナは頬を緩めて喜んでくれた。


「私も、逞とずっと一緒にいたい」


自分で言ったときはなんて胡散臭いことを言ってしまったんだと思ったけど、こうして言われると、なんだかくすぐったい気持ちになる。
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