毒蝶
「……ルナ、一緒にご飯作ろうか。今日はハンバーグを作ろうと思って」


体を起こし、近くにあったシャツを手に取る。
だけどそれは、ルナに奪われてしまった。


「ルナ?」


ルナは僕の服を着る。


「逞は寝てて。いつも作ってくれるから、今日は私が作ってあげる」
「え、ルナ、料理できるの?」


ルナは表情を曇らせる。
その質問をして、すぐに後悔した。


ルナには男がいた。
上から押さえつけてくるような、最低な男が。


料理をさせられたことだってあるだろう。


……聞くんじゃなかった。


「ルナの料理、楽しみにしてる」


ルナに笑顔が戻る。


「うん」


そしてルナはキッチンに立つ。


僕のシャツだけを着て、動き回っている。
なんというか、見えそうで見えない。


見てはいけないような気がするのに、どうしても僕のために料理をしてくれているルナの背中を見ていたかった。


ときどきルナと目が合い、笑いあう。


見ているだけでもよかったけど、隣に立ちたくなった。


下着を身に付け、ベッドを降りる。


「どうしたの?」
「手伝おうと思って」


ルナは頬を膨らませる。


「今日は私が逞に料理を振る舞おうと思ったのに」
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