妖精姫ともふもふな妖精猫の王様~妖精の取り替え子と虐げられた王女は猫の王様と冒険がしたい~

1-9

 石壁の向こうには信じられない光景が広がっていた。

「ここは塔の中のはず……なぜ田園地帯が広がっているの?」

 隠し部屋だと思っていたカテリアーナの想像は見事に外れた。

 眼前に広がるのは森に囲まれた広い田園地帯だった。久しぶりに目にする陽の光は眩しく、カテリアーナは目を(すが)める。

 後ろでバタンと扉が閉まる音がする。カテリアーナが振り返るとそこには木の扉があった。

「石壁じゃない? ここはどこなの?」

「エルファーレン王国の農業地帯だ」

 どこからか少女のような甲高い声が聞こえる。カテリアーナは声の主を探し、周りを見回す。

「どこを見ている? ここだ」

 足元から声が響く。下を見るとノワールがカテリアーナを見上げていた。アメジストの瞳がキラキラと輝いている。

「まさか……」
「そうだ」

 一瞬、カテリアーナの思考が停止する。そしてしばらくの後、やっと声を絞り出す。

「ノワールがしゃべった!?」
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