妖精姫ともふもふな妖精猫の王様~妖精の取り替え子と虐げられた王女は猫の王様と冒険がしたい~
 ラストリア王国とエルファーレン王国には不可侵条約というものがあり、例え王女の輿入れといえども騎士団はおろかラストリア王国からの人間は誰一人として連れていけないのだ。

 それどころか、王女が嫁ぐというのに、嫁入り道具は一切持たされていない。カテリアーナが持ってきたのは古びた皮の小さなトランクだけだった。

 だが、最たる理由は――。

「不可侵条約だけではないのだけれどね」

 誰にともなくひとりごちながら、カテリアーナはため息を吐く。

 国境であるこの中州はシド島と呼ばれている。

 湖に囲まれたこの島は緑が豊かで心地よい風が頬を撫でる。木々は優しくカテリアーナを日差しから隠す。

 カテリアーナは風景を楽しみながら歩いていく。途中、うさぎや鹿がこちらを窺うように立ち止まってカテリアーナを見ている。

 可愛い動物たちの姿にカテリアーナの顔が自然と緩む。

「ふふ。可愛い」

 カテリアーナは動物が好きなのだ。そして動物たちに懐かれやすい。
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