妖精姫ともふもふな妖精猫の王様~妖精の取り替え子と虐げられた王女は猫の王様と冒険がしたい~
 先日、カテリアーナ宛にアイザックから手紙が届いた。手紙には自分がカテリアーナのエスコートをすること、今は騎士団で働いていることなどが書かれていたのだ。手紙を読んだ時は彼が無事であることにほっとした。

「そうか」と一言だけ呟いたノワールの声はなぜか不機嫌そうだった。

◇◇◇

 四年ぶりに北の塔から王宮への渡り廊下が開かれた。今夜はカテリアーナの社交界デビューの日だからだ。

 着替えを手伝ってくれる侍女やメイドがいないので、カテリアーナは鏡を見ながら自分で支度をしたのだ。鏡は塔の物置部屋から引っ張り出してきた。全身が写る鏡なのでドレスを着る時に役に立った。

 化粧品もノワールが用意してくれたのだが、今まで化粧の仕方を習ったことがないので紅だけさした。

 エスコートをするため、北の塔までカテリアーナを迎えに来たアイザックと見張りの兵士は渡り廊下に出てきたカテリアーナを見て、息を飲む。

 四年ぶりに再会したカテリアーナの姿があまりにも美しいからだ。

「久しぶりですね。アイザック卿? どうかされましたか?」
「あ、いいえ。失礼いたしました。美しく成長されましたね、カテリアーナ王女殿下。王太后陛下がご覧になられたら、さぞや喜ばれたことでしょう」

 アイザックは『取り替え姫』ではなく、今もカテリアーナのことを王女殿下と呼んでくれる。

「おばあさまはきっと天からご覧になっていらっしゃるわ」
「そう……ですね。では参りましょうか。まもなく夜会会場への入場が始まります」

 差し出されたアイザックの腕にカテリアーナは手を添えて歩き出す。
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