妖精姫ともふもふな妖精猫の王様~妖精の取り替え子と虐げられた王女は猫の王様と冒険がしたい~
 エルファーレン王国へ招待ではないのか? という問いかけはしなかった。そもそもカテリアーナが成人したら、エルファーレン王国へ招待するというのはノワールとの約束だからだ。

「そのままのとおりだ。お前は一か月後にエルファーレン王国へ嫁ぐのだ」
「良かったわね。わたくしも同じ時期にオルヴァーレン帝国へ嫁ぐことが決まったの。グリージオ様はそれは素敵な方よ。エルファーレンの国王は怪物のような姿らしいけれど、『取り替え子』のおまえにはお似合いかもしれないわね」

 アデライードはクスクスと笑う。その顔は優越感に満ちている。

「アデライードはオルヴァーレン帝国へ。カテリアーナはエルファーレン王国へ。国益のためだ」
「王女として生まれたからには政略結婚は当たり前ことです。わがままは許しませんよ、カテリアーナ。ああ、『妖精の取り替え子』のお前は故郷に帰るかしら?」

 王太子の兄と王妃である母は十三年ぶりにカテリアーナに声をかける。侮蔑がこめられた言葉は妹に……娘に対してかけるものではない。

「そうそう。夜会のドレスは素敵だったわね。アイザック様の贈り物かしら? わたくし気に入ったわ。あのドレスをわたくしにちょうだい。装飾品もすべてよ」

 あれはノワールからの大切な贈り物だ。いくら姉の頼みといえども渡すわけにはいかない。

「それはできません。あれはわたくしの大切なものなのです!」

 執務室にパシッと高い音が響く。
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