本能で恋をする
「え…?あの、私、恋人を待ってるので……
すみません……」

「えー、彼氏なんてドタキャンしちゃえ!!」
そう言って凛音の手を掴む。
「や…やだ…
離して下さい…!」

必死に掴まれた手を引っ込めようとするが、凛音の力ではびくともしない。
「なぁ、いいじゃん!俺達が楽しませてあげるから!」
そして、凛音の手を引っ張り――――



「おい!!!俺の凛音からその汚ねー手、離せよ!!」
「海斗…!」
「凛音。おいで?」
俺は優しく凛音をこちらに促し、背中に隠した。
凛音は俺の背中にしがみつき、震えている。
そして、鋭い目で奴らに向き直る。

「んだよ!お前!」
「見てわかんねーのか!凛音の彼氏だよ!」

「やんのか!俺、これでもケンカで負けたことないんだよね!どうする?」
俺の胸ぐらを掴んでくる。
「どうする?って、別に。
やれるものなら、やってみろ!」
俺も怯まない。

数秒の俺等のにらみ合いが続くと、周りがざわつきだした。
「チッ。なんかしらけた。行こーぜ!」
相手の方が痺れをきらし、去っていった。
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