本能で恋をする
「…ったく。ヤル気ないなら、喧嘩売るなっつーの!」


「凛音。奴ら行ったよ!
もう大丈夫!」
俺は後ろでうつむき震えている凛音に、出来る限り優しく声をかける。

「ほ、本当…?よかったぁ…
ごめんね、海斗。私こうゆうの初めてで……」
少し涙を溜めて、凛音が俺を見る。
でもまだ俺の袖を握ったままだ。

「初めて…!?
凛音、そんな可愛いのにナンパされたことないの?」
正直これが初めてじゃないと思っていた。それくらい凛音は可愛いのだ。
最初に奴らに声かけられたときも、俺が初めて出逢った時も、冷静に受け答えしてたし、慣れっこなのかと……。

「あるわけないでしょ!」
そーとー怖かったのか、少し苛立ちを含んだ声だ。
「そっか。最初けっこう冷静に話してたから。
俺が初めて会ったときも、冷静にかわされたし」

「そりゃ、ちょっと声かけられることはあったよ!でもだいたい一緒に友達いたり、海斗の前に付き合ってた人達は待ち合わせじゃなくて、家に迎えにきてくれたりしたから。
海斗とだって、私よりいつも海斗が先に待っててくれてたでしょ?
話しかけられるくらいなら、ちゃんと対応できるけど、さっきみたいに、手を掴まれたりするのは初めてだったから……」
またうつむいてしまった。

「あ、そうだったんだ。ごめんね…俺が来るの遅かったから」
「え?あ、違うの!
海斗が悪いんじゃないよ!
いつも、私が待ち合わせ場所に行くの遅いから……」

きっと凛音はわかっていない。自分がどれ程魅力的かを……。
たぶん友達も、元彼達も心配して気を遣ってたと思う。
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