冷たい海
久しぶりに入る美夏の部屋は僕の部屋とは随分違った。スリムサイズのカラフルなカラーボックスの上にはドールハウスが置かれており、そのあちこちで小さなお人形が天真爛漫な笑みを浮かべていた。そして部屋のいたるところには緑や水色やピンク……お洒落なワンピースが掛けれていた。彼女はベッドに横たわりながら、お気に入りの白いうさぎのぬいぐるみをしっかりと抱えていた。
僕の部屋といったら勉強机に箏に布団……他にあるものといったら釣りの道具のような色気のないもので。そんな部分がいつも一緒にいたはずの僕と彼女の絶対的な違いを主張して、僕はしばしば寂しくなっていたのだった。
「ちょっと、涼平兄ちゃん。何してるの? 起こしてよ!」
そんなセンチな感情を抱いていた僕に、美夏は苛ついた声を投げかけた。
「分かった、分かった。ほれ」
僕が手を差し出すと、美夏は白いうさぎを離した右手でしっかりとつかんだ。
「よいしょっと……」
僕は彼女の右手を引っ張って起こし、手を離した。しかし……彼女は足を床につけて立とうとしたが、まるで足に力が入らないかのようにその場に座り込んだのだ。
「美夏……どうしたんだ?」
事情が飲み込めない僕は、茫然と彼女を見つめた。
「涼平兄ちゃん……」
美夏は涙を溜めた瞳を僕に向けた。
「私……足が何か、おかしい。力が入らなくて、立てないの」
一体、どういうことなのか。どうして彼女が立てないのか、分からなかった。
いつも元気な彼女のそんな言葉は、あまりに現実味がなくて。きっと、今日は低血圧がいつもよりひどいんだろう。僕は必死で自分にそう言い聞かせていた。
僕の部屋といったら勉強机に箏に布団……他にあるものといったら釣りの道具のような色気のないもので。そんな部分がいつも一緒にいたはずの僕と彼女の絶対的な違いを主張して、僕はしばしば寂しくなっていたのだった。
「ちょっと、涼平兄ちゃん。何してるの? 起こしてよ!」
そんなセンチな感情を抱いていた僕に、美夏は苛ついた声を投げかけた。
「分かった、分かった。ほれ」
僕が手を差し出すと、美夏は白いうさぎを離した右手でしっかりとつかんだ。
「よいしょっと……」
僕は彼女の右手を引っ張って起こし、手を離した。しかし……彼女は足を床につけて立とうとしたが、まるで足に力が入らないかのようにその場に座り込んだのだ。
「美夏……どうしたんだ?」
事情が飲み込めない僕は、茫然と彼女を見つめた。
「涼平兄ちゃん……」
美夏は涙を溜めた瞳を僕に向けた。
「私……足が何か、おかしい。力が入らなくて、立てないの」
一体、どういうことなのか。どうして彼女が立てないのか、分からなかった。
いつも元気な彼女のそんな言葉は、あまりに現実味がなくて。きっと、今日は低血圧がいつもよりひどいんだろう。僕は必死で自分にそう言い聞かせていた。