冷たい海
翌日も学校終わり、直接病院に寄った。その日は美夏は一人、ベッドから体を起こし背中を壁にもたれさせて窓の風景を眺めていた。
二学期も始まってまだ間もない頃だった。少し勢いは弱まったがそれでも黄金色の強い熱を放つ太陽の光が、窓から見える花壇に咲いていた青い紫陽花の花をジリジリと焼いて枯らしていた。
僕には何故かその風景が彼女の運命を暗示しているかのように思えて、どうしようもないほどに遣る瀬無くなった。だから窓のカーテンを全部しめて、彼女と僕のいる病室をすっかり薄暗くしてしまった。
「ちょっと、涼平兄ちゃん! 何すんの? 折角、窓の外を見てたのに」
美夏は頬を膨らませて僕を睨んだ。
「いや、太陽の光が眩しそうだったから」
僕は思わず頭を掻いて、適当な言い訳をした。
「もう……」
彼女は頬を膨らませたまま、ベッドに寝かせている自らの足に目を移した。
その目は暫し……彼女が逃避していた現実に引き戻されるまでの数秒間、動きを止めた。そして視線は宙に浮き、その瞳は僅かに潤んだ。
「ねぇ、涼平兄ちゃん」
彼女はその瞳を僕に向けた。
「涼平兄ちゃんは、知ってるんでしょ?」
「……何を?」
不意に投げられた質問に対し、鳥肌が立った。涙が出そうになるほどに僕はその意味を理解していた。しかし、僕の口は反射的に誤魔化しの言葉を発してしまったのだ。
二学期も始まってまだ間もない頃だった。少し勢いは弱まったがそれでも黄金色の強い熱を放つ太陽の光が、窓から見える花壇に咲いていた青い紫陽花の花をジリジリと焼いて枯らしていた。
僕には何故かその風景が彼女の運命を暗示しているかのように思えて、どうしようもないほどに遣る瀬無くなった。だから窓のカーテンを全部しめて、彼女と僕のいる病室をすっかり薄暗くしてしまった。
「ちょっと、涼平兄ちゃん! 何すんの? 折角、窓の外を見てたのに」
美夏は頬を膨らませて僕を睨んだ。
「いや、太陽の光が眩しそうだったから」
僕は思わず頭を掻いて、適当な言い訳をした。
「もう……」
彼女は頬を膨らませたまま、ベッドに寝かせている自らの足に目を移した。
その目は暫し……彼女が逃避していた現実に引き戻されるまでの数秒間、動きを止めた。そして視線は宙に浮き、その瞳は僅かに潤んだ。
「ねぇ、涼平兄ちゃん」
彼女はその瞳を僕に向けた。
「涼平兄ちゃんは、知ってるんでしょ?」
「……何を?」
不意に投げられた質問に対し、鳥肌が立った。涙が出そうになるほどに僕はその意味を理解していた。しかし、僕の口は反射的に誤魔化しの言葉を発してしまったのだ。