王子と社長と元彼に迫られています!
「・・・悪い、不謹慎だと思うけど、そうやって強がるお前が可愛くて仕方ない。」

暁さんはそう言って強く 抱きしめてくる。まるでそうしていないと私が消えてしまうかのように。店で同じように彼に包まれた時は何でもなかったのに、今になってホッとして涙が出てきてしまった。あんな人達のせいで泣きたくなんてなくて、出来るだけ静かに最小限の涙だけこぼそうと努める。暁さんはそんな私の髪や背中を優しく撫でてくれていた。


「・・・もう、大丈夫です。すみません。」

思ったよりたくさんの涙を流してしまったし、時間も結構経ってしまっていた。

「も~せっかくお風呂お借りしてすっきりしたのに、顔が涙だらけになっちゃった。」

「今から俺風呂入るから一緒に入るか?」

暁さんは何でもないことのように言った。

「!?・・・また、そうやってからかって・・・。」

「からかってなんかない。出張の時の朝は惜しいことしたからな。俺のシャツを脱がし損ねた。ずっと心残りだったんだ。」

『シャツ』と聞いて記憶がないあの夜のことを想像し、顔が熱くなってきてしまう。

「本当、あの夜は楽しかったよ。俺、あんな風に自分が起業した時のこと、苦労話みたいなのしたの初めてだった。ちさのドレス姿も可愛かったし。なんか星谷紬に対して優越感感じるよ。」

───ん?『あんな姿見せたの初めて』=苦労話したのは初めて、『可愛かった』=ドレス姿?・・・じゃあ、もしかして私達はあの夜何も・・・?でも私は彼のシャツを着ていて下着も・・・。

「・・・あの、すみません、私あの夜のこと覚えてないんです。暁さんの起業した時のお話はよく覚えてるんですけど、その後・・・その、寝た・・・時の話とか。」

覚悟を決めて聞いてみた。ドキドキしながら彼の答えを待つ。
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