王子と社長と元彼に迫られています!
暁さんは私の前まで来ると体を屈め後ろの壁に手をついて、両手が塞がり身動きがとれずにいる私を捕らえるようにし、先程とは違う真面目な表情になり聞いてくる。

「・・・ちさ、俺とそうなるの嫌なのか?」

「・・・嫌って言い切れないから困るんです・・・このままここにいたら・・・。」

そう答えると暁さんは一瞬驚いた顔になり、それから穏やかな表情になって私の髪を優しく撫でてから、唇に一瞬のキスをして、体を離した。

「わかった。今はそれで許してやる。」

「暁さん・・・。」

「でも今日はここに泊まっていけ。あんなことの後で一人にしたくない。今この家には食べるものがないからデリバリーでも頼もう。その後、寝室は鍵かかるからそこで寝るといい。俺はこのソファで寝る。これ、ソファーベッドになるんだ。」

「・・・う、えっと、じゃ、お言葉に甘えて・・・。」

あんな風に人に悪意を向けられたのは初めてで、正直今夜は一人にはなりたくかった。暁さんはキッチンの方に行きかけて振り返った。その顔はすっかり妖艶なものに戻っていた。

「・・・でも、忘れるな。俺と晴れてそういうことになるまで利子がたまり続ける。だからそうなった時には・・・大変なことになるだろうな。俺の気持ちを受け取ってくれるなら早くした方がいいかもしれないぞ。」

「・・・わかりました。」

柚香は今の状況を楽しめと言っていたけれど、これからどうするかそろそろはっきりしないといけないと思った。
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