王子と社長と元彼に迫られています!
「ご、ごめんね。変なもの見せちゃって・・・。」

泣きたい気分だったけれどあはは、と笑って言うと紬くんは、無理矢理口角を上げている私の下唇を指でなぞった。

「次、二人きりになったら僕きっともう自分を抑えられない。」

「!?」

低く抑えられたキャラメルボイス。溢れる色気に飲み込まれそうだ。

「・・・また、いつもの電車でね。」

そう言って微笑んだ紬くんは一見いつもの彼だったけれど、なんだかすごく辛そうだった。私がハグやキスは受け入れつつ、告白の返事はしないという中途半端な対応を続けていることが彼を苦しめてしまっているのだろう。この間暁さんの家に泊まった時の彼の様子からすると、きっと彼も・・・。

誕生日を誰と過ごすのか、それとも誰とも過ごさないのか、そこではっきり答えを出さなくてはならないと思った。


*****

昼休み。一人でゆっくり考えたくて珍しく外食することにした。向かったのは雑貨屋さんの2階にある可愛らしい隠れ家カフェで、たくさん並んだシリアルやドライフルーツの瓶から自分で好きなものを選びオリジナルのシリアルを調合したりも出来るお店だ。

今日は気温が15度くらいあり、日が当たっているとぽかぽかと温かいのでテラス席に座ることにした。

席につきほうじ茶を飲みながら料理を待っていると電話が鳴った。発信者を確認し電話に出る。『もしもし』を言うより前に耳に入ってきたのはあの言葉だった。

『お前がほしい。』

その言葉に私はほうじ茶を霧状に吹き出した。その霧の中に虹がかかったように見えたのは気のせいだろうか。
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