王子と社長と元彼に迫られています!
慌てて周りを見回すが、もうひとつあるテラス席に客はいなかった。

『鈴丘、聞いてるか?我はお主がほしいのだ。心の底からほしくてたまらぬ。』

電話の相手は暁さんの名古屋出張に同行した時に訪問した会社の社長、涼華さんだった。恋焦がれるような熱っぽい声で言われ、大いに戸惑う。

「えっ、えーとその・・・。」

───な、なんて答えたら!?大変ありがたいのですが、あいにく私、恋愛対象は男性のみで・・・?

『派遣社員をしていると言っていたな。契約はいつまでだ?』

「え・・・?あ、3ヶ月更新なので今の契約は3月末までです。」

『よし!好都合だ!鈴丘、4月から我が社に来ないか?』

「え!?」

『地元の名古屋に戻ったのは業務拡大の為だ。我が城───オフィス───も大きくなったし、圧倒的に人が足りんのだ。我々を助けると思って力を貸してくれないか?お主ならきっと我が社で活躍できる。他の社員達も是非鈴丘に来てほしいと言ってるんだ。』

「え、えっと・・・。」

展開が早くてついていけない。出張の時『我が社で働いてほしい。』と言ってくれたのはあの日のパーティーが盛り上がったからノリとか社交辞令で言ったのだとばかり思っていた。本当にあの日初めて会った私を会社に迎えたいと思ってくれていたなんて。
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