王子と社長と元彼に迫られています!
「・・・その件は風の噂で存じております。それをわかった上でのお願いなのです。」

「あんたは、友達になって俺に近づいて俺が振られるのを待ち、振られたら自分の方に来るように仕向けよう、みたいなことを考えるような女ではなさそうだけどな。」

「もちろんそんなことは考えておりません。今まで暁社長にはたくさんの女性がアタックされているようでしたが、社長の方からアプローチをしている女性がいるというような話は聞いたことがありませんでした。でも今は意中の女性がいらっしゃる、ということで、お恥ずかしながら私も焦ってきてしまって、なりふり構っていられなくなったのです。そして、大変失礼ながら突然想いを伝えさせて頂きました。」

彼女の落ち着いた口調の中には確かな熱がこもっていた。真剣に暁さんのことが好きなのだなと思った。

「最近以前より想いを告げられることが増えたのはそれが理由か・・・悪いが、気持ちに応えることはできない。こう言われるのをわかっていて俺をここに連れてきたんだろう?」

「はい。社長の口からその言葉を聞くまでは諦めることが出来なくて・・・。」

「じゃあ、これで満足だろう。これから外出なんだ。」

「はい。お忙しいところ足止めしてしまい大変申し訳ありませんでした。お時間頂きありがとうございました。それでは、失礼します。」

彼女は表面的には終始穏やかな様子だったけれど、最後の方は声が少し震えていた。ヒールの音がして階段からロビーに繋がるドアが締まる音がすると、下から階段を昇ってくる足音が聞こえてきた。『まずい!』と思った時には既に遅く私は下方から妖艷な瞳に捕らえられていた。
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