王子と社長と元彼に迫られています!
「なんで・・・派遣の契約切られちゃうとか、そういうこと?それでも僕いつでも会いに行くよ。」

「違うの。暁さんの関係で知り合った名古屋の会社の女性社長から『4月からうちの会社に来ないか。』って誘って頂いてて───」

言っている途中でぎゅうっと抱きしめられ、地面に紬くんが持っていたコップが転がる。彼の心の中でギリギリのところで平静を保っていた何かが崩れ去ってしまったようだった。

「・・・嘘でしょ・・・行かないでよ・・・暁さんが選ばれても納得できるけど、そんな、もう会えないなんて・・・。」

「あ、あのね、名古屋に行くことはまだ決定してはいないの。ただ、新しいところで一から頑張ってみたいっていう気持ちがあって・・・。」

紬くんが泣きそうになっているのがわかって慌てて言った。

「・・・僕も行くよ。」

「え!?」

「僕も仕事辞めて名古屋に行く。フリーのwebデザイナーになること、ずっと考えてたんだ。今の会社と契約デザイナーという形態になることだってできるし。会社にいたら結局外見を利用されるというか、今自分が持っている仕事も本当に実力でとったものなのかわからなくなってきたんだ。青い考え方かもしれない、使えるものは使って仕事をとればいいのかもしれない。でもやっぱり過去のトラウマが消えないんだ。」

「紬くん・・・。」

「名古屋で一緒に暮らそうよ。僕は在宅の仕事になるし、家事好きだから全般やる。恋人としての同棲でなくてもいいんだ。ルームシェアって感じで。名古屋ならSweetaholic Flowers(スイフラ)のライブもあるでしょ?名古屋のライブって盛り上がるって聞くし。知らない土地で一人なんて絶対心細いよ。」

彼の表情も声も痛いくらいに真剣だった。
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