王子と社長と元彼に迫られています!
「紬くん、ありがとう。でもその気持ち受け取れないの。楽しい時間や優しい気持ちをもらってばかりで、何も返せないでこんな結果になって本当にごめんなさい。」

抱きしめられた腕の中で頭を下げると涙がこぼれてきた。

「・・・もう、いいよ・・・。」

「・・・。」

もう、私なんかのことはどうでもいいと思ってくれたのだろうか。ハグをしたりキスを受け入れたり家に入れたり・・・散々気を持たせるようなことをしておいてこんな風に離れようとするひどい私に愛想を尽かしてくれただろうか。

「もういい・・・気持ち受け取ってもらえなくても、一生弟だと思っててもらってていいから、一緒にいたいよ・・・。」

絞り出すような苦しそうな声。抱きしめ返そうとして手を下ろす。

「・・・もう、時間だよね。誕生日のことはわかった。でもこれからのことはまた改めて話してほしいな。」

「・・・うん。本当にごめんね。」

「もう謝らないで。ちぃちゃんは何も悪くないよ。僕が勝手に好きになり過ぎただけなんだから。恋人になれなくても出逢ってからずっと幸せだったし。」

微笑みながら言う彼にどんな言葉を返したらいいのかわからずにいると体が離れた。目線が合うと紬くんの瞳はいつもにも増してキラキラしていた。それが涙だとわかって、ピンクとパープルとグリーンの水彩タッチの花が描かれたタオルハンカチを差し出す。彼はそのハンカチを握りしめてから涙を拭くとポケットから青系のグラデーションカラーのタオルハンカチを取り出して差し出してきた。

「借りたハンカチは洗濯して返すから。今日一日ハンカチないと困るでしょ。これ使って。」

「・・・うん。」

立ち上がった紬くんに続くと手を握られた。恋人繋ぎではない握手のような繋ぎ方だ。それでも思わずピクッとして繋いだ手を見てしまうと『お願い。公園を出るまででいいから。』と切羽詰まった声で懇願されてしまい、とても離せなかった。


*****

そしてお昼休みがやってきた。暁さんと話す番だ。
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