王子と社長と元彼に迫られています!
───ふうぅ、随分資料もらっちゃったな・・・。

金曜日の夕方、展示場内の広くて綺麗なトイレ。一番端の洗面台で手を洗ってからメイクを直す為、鞄とパンパンに資料が詰まったトートバッグを壁に持たれかけさせる。

今日は映像機器関連の展示会に行く為展示場に来ていた。直行直帰でいいと言われているので、この資料は家に持ち帰り来週会社に持っていくことになる。今日の参加の目的は映像を使った新商品の企画の為、ということだったけれど、それほど熱が入っているものではなく、一応チームの一人に参加させておこう、くらいのものであることはわかっていた。

でももし4月から名古屋に行くのなら展示会に参加したりするのはこれが最後になるかもしれない、と思うと自然と熱が入ってしまった。お昼休憩以外は休むことなく広い会場を歩き回り、いつもよりたくさんのブースを回って名刺交換をし、メモを取りながら話を聞いて資料を頂き写真を撮った。

まだ働き始めて半年くらいなのにやっぱりこの仕事が好きだな、と改めて思った。元々映像に関する知識も興味も全くなく、派遣の求人サイトを見て家から近くて残業もなく時給も高いしなんとなく面白そう、という軽い気持ちで応募した仕事だった。

しかし今では知らなかった映像に関する知識を知ったり、前に正社員として働いていた会社では関わることが出来なかった仕事にまで関わらせてもらったりすることが大きな喜びだった。自分が出した企画が会社のプレスリリースとして発表されることも───担当者の名前として自分の名前が掲載されることはなくても───嬉しかった。
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