王子と社長と元彼に迫られています!
涼華さんの会社では正社員として迎えてもらえるしきっともっと色々な仕事が出来る。担当者として責任を持つことも出来るし、なんといってもズボラだという自分の特性を活かすことが出来るなんてまたとない機会だ。

しかも自分から応募したわけではなく向こうから私を必要としてくれているなんて光栄なことだ。年齢が上がるほど正社員にはなりづらくなるし、受けない理由なんてきっとない。来週中にでも承諾の連絡をするべきだろう。

でも暁さんに言われた『俺と星谷紬の気持ちに応えられないから、好きな元彼にも女がいるから、お前はここから去るのか?仕事もそんな風に決めてそれでいいのか?』という言葉が引っ掛かっていた。私は本当に名古屋に行きたいのか?派遣であっても今の仕事が、職場が好きなんじゃないのか?ただここから逃げたいだけなんじゃないか?

───自分の気持ちなのにわからないなんて・・・。

とにかく家で考えよう、と思い鞄からメイクポーチを取り出そうとしたら隣のトートバッグが重たい音を立てて床に落ちた。色とりどりの資料がバラバラと広がる。

「あ~あ。」

屈んで資料を集めていると誰かがトイレに入ってきたようだった。ちょっと恥ずかしいな、と思いつつ顔を上げずに資料を集め続けていると『大丈夫ですか?』と高めの声がして黒いパンツスーツを着たその人が一緒に資料を集めてくれ始めた。細くて長い指に上品なピンクベージュのネイルを施した彼女にお礼をしようとして顔を上げた途端思わず集めた資料の束を落としそうになった。

───優悟と一緒にいた女性(ひと)だ───。
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