王子と社長と元彼に迫られています!
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よく晴れた今日の空みたいに綺麗なスカイブルーの丸っこいフォルムの車が、優悟と私を乗せて高速道路を軽快に走っていく。BGMは私が好きなSweetaholic Flowers(スイフラ)のベストアルバムだ。

『女性ボーカルって食わず嫌いしてたけど、好きな感じの曲もあったからちゃんと聞いてみたい。』優悟にそう言われてCDを持ってきた。夢で私と紬くんが行った彼女達のライブでパフォーマンスを見て気になったらしい。優悟は男性二人組のフォークデュオが好きだったが、スイフラの歌詞にも彼らが歌う青春ぽい歌詞に通じるところがあったのだ。

「あ、この歌好き。」

「私も!じゃ、今度ライブDVDも一緒に観てみない?」

付き合いたてのカップルみたいなそんな初々しい会話がくすぐったくて嬉しかった。

家の近くのコインバーキングに停まっていたこの車に乗り込むと、中の小物などから明らかにレンタカーではないことがわかった。

『どうしたの、この車?友達とかに借りたの?』と尋ねると優悟は『買った。』と言っていそいそとエンジンをかけた。

『千咲、こういう色でこういう形の車見る度、「かわいい。」って言ってたろ?最初に千咲を乗せたかったんだ。』彼はそんな、いかにも紬くんが言いそうな甘い言葉をさらりと言った。まるで車内がお菓子屋さんになったかのように甘い香りがするような錯覚を覚えた。

『・・・というか千咲以外は乗せたくない・・・家族ならいいか。千咲も家族みたいなものだし。』その言葉はなんだか『妹とか姉みたいな感じ。』と言われたような気がして『彼女』じゃないのかな・・・なんてちょっとしょんぼりしてしまった。私が彼のこの言葉の真意を知るのは翌日のことだ。
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