王子と社長と元彼に迫られています!
優悟に今日も明日も予定がないことを伝えると『一泊する準備して。』と言われた。驚きと期待を抑えつつ『どこに行くの?』と聞くと『バースデー記念のミステリーツアー。』と返してきた彼の顔はすごく楽しそうで、自分の口の両端がつられて上がるのがわかった。

『いくら女子力ない私でも多少時間かかるし、上がって待ってて。』そう言うと優悟は首を横に振り『いや、部屋に一歩入った途端、千咲のことを襲うのが目に見えてるからやめとく。』と苦しげに言った。

その言葉に驚いて彼を見るとまるで暁さんが憑依したかのように全身から色気がほとばしっていて、思わず後ずさりしてしまったのだった。


車は高速を降りて下道を走り出した。

───暗くなってきたし、今日はご飯を食べてどこかに泊まって明日観光とかするのかな?

ミステリーツアーということなので聞くわけにはいかずにいるとどこかの駐車場に到着した。レストランでもホテルや旅館でもなさそうだ。車を降りる優悟に続くとそこは植物園だった。

案内板を見ると営業終了の15分前で、入園受付時間は過ぎてしまっている。いつも出かける時は休業日や営業時間、料金など全て私が調べていた為、優悟は慣れていないのかもしれない。素敵な車で好きな曲を聴きながらおしゃべりするドライブだけでも楽しかったし、優悟が自分の為にプランを考えてくれたことが何より嬉しかった。

「素敵なところ探してくれてありがとう。今日は終わっちゃってるね。明日また来てもいいかもね。」

そう言って車に戻ろうとすると、優悟はずんずんと入り口の方に進んでいく。

───えっ!?どうしたの!?せっかくの計画がうまくいかなくてヤケを起こして無理矢理入れてもらおうとしてるとか!?

「優悟、待って!」

慌てて追いかけるが彼は受付の前を素通りし、すぐ先にある温室の中に入ってしまった。
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