王子と社長と元彼に迫られています!
「ねぇ、駄目だよ!不法侵入だよ!?」

受付は無人だった。温室内で立ち止まった優悟にようやく追い付いて言うと『大丈夫。』と返してくる。

「閉園後、貸切にしてもらった。」

「え!?貸切!?」

「ここは大学の先輩夫婦の植物園で、頼んだんだ。来月の毎週土日どっちか、ここの諸々(もろもろ)の作業手伝うからって。」

「・・・!?」

───わ、私の為にそんな・・・!?

「・・・こういうの嫌だった?」

優悟は驚いて固まる私に近づいてくると、私の長い髪を全部体の前側から背中側に移動させながら尋ねてきた。

「ううん・・・嬉しいけど、ただびっくりして・・・ありがとう優悟。」

そう答えた私は彼に優しく抱き寄せられた。背中に回された両手にぎゅっと力が入る。そこから彼の想いが私の中に注がれていくようだった。全身が熱くて甘い気持ちで満たされていく。

「来月の土日ここに来る時、私も来てもいい?」

「いいよ、俺が一人で来るから。」

「その・・・優悟と一緒にいたいから。」

顔がかああと熱くなる。約3年も付き合っていたのに初めて口にする言葉だった。優悟は体を離して私の顔を見た。驚いたようなその顔はすぐに切なげな表情に変わった。

「は、恥ずかしいからあんまり見ないで・・・。」

「じゃ、見るのはやめる。」

そう言って彼は目を閉じると私の唇に自分の唇を重ねた。

とろけるような甘い甘いキスだった。何度も何度も確かめるように隅々まで味わって、とことん絡まり合った。

途中で苦しくなって離れようとしても優悟はそれを許してくれず執拗に私の唇を求めた。キスで全ての体力を使い果たしてしまうのではないかと思うくらいだった。

二人から吐息か声かわからないものが漏れる度、温室の温度が上がっていくようだった。漂う甘い香りは植物のものであろうけれどなんだかそれだけではないような・・・周りの暑さと体の奥からの熱で段々とのぼせていく中、ぼうっとした頭ではそんなことしか考えられなかった。

しかしこのキスはこれから始まる甘過ぎる時間の序章に過ぎなかったのだ。
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