王子と社長と元彼に迫られています!
*****

「このヤシノキ、熟すと保存食にできるみたいよ。」
「まじか。どんな味するんだろ。」

「うおー、この花なんかすげー。」
「わー、グロテスク。モンスターみたい。」

「見て、大きな実が落ちてる。」
「重そうだな・・・あ、意外と軽い。持ってみ?」

外は暗くなってきていた。温室の中はライトアップされ、今まで行ってきた植物園とは違う雰囲気を(かも)し出している。

そんな中で私達はいろいろな植物を見ながら目が合う度にキスを交わす。自分でも『何やってるの?付き合いたてのカップルでもしないんじゃない?』と思うくらいのバカップルと化していた。でも今はどっぷりとこの甘さに浸かっていたかった。

温室内を歩いていくと、ハート型のフレームにグリーンが絡まっていて、真ん中から顔を出して写真を撮れるようになっていた。ご丁寧にスマホを置く三脚まで設置してくれてある。私達は写真に写るのが苦手で旅行先の写真はほとんどが風景写真であり、観光地にある顔をはめるパネルなどはスルーするタイプだった。ツーショット写真は2、3枚しかないんじゃないだろうか。

でも、今は二人で写真が撮りたい、というかこれからは撮っていきたい、と思っていた。今の二人を記録に残したい。その気持ちは優悟も同じようで、スマホを三脚にセットし始めた。

ハートのフレームの向こう側に回り、カメラを見つめる。優悟が戻ってきてフラッシュが光った瞬間、顎を持って彼の方を向かされ唇が重なった。

「~~もう、絶対私だけ変な顔になってるよ・・・。するならするって言ってくれたら・・・。」

「言ったら『恥ずかしいから嫌だ。』とかってしてくれないかなと思ったから。言ってもしてくれた?」

「・・・う・・・うん、まあ・・・。」

優悟は歯切れ悪く頷く私の頬を撫でて『赤くなってる。可愛い。』と言うと、両頬に軽く口づけた。
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