王子と社長と元彼に迫られています!
「あの、離してください。」

「嫌だって言ったら?」

「おっ、大きな声出します。」

「出してみろよ。声出したら、キスして吸いとってやるから。」

「キ!?そ、それは、脅迫です!」

「脅迫上等。」

そう言って顔が近づいてくる。

「や、まだ大声出してないじゃないですか!」

「キスするって言ったらしたくなっちゃっただけだよ。」

「『だけだよ。』じゃないですよ!そんな綺麗な顔近づけないで下さい。眩しすぎて目が痛いから!」

「じゃ、目つぶればいいだろ。」

「そういう問題じゃない!」

「じゃ、どういう問題?」

そう言いながらもじりじり近づいてくる。まさか、本当にするわけない。からかわれているだけだ。

「や、やれるものならやってみてくださいよ。私はそんな脅しなんかに屈する女じゃないですから!」

お酒の勢いもあり強気でそう言い終わった瞬間、目の前が暗くなって唇に柔らかくて温かいものが触れた。もちろんその正体が何かはわかる。

「!?ちょっ!?なっ!?」

「やれるもんならやってみてって言われたからやってみたまでだよ。」

風鈴の音が聞こえてきそうな涼しい顔で言われ、私の顔は溶岩のように熱くなった。

「も、も~、からわかないで下さいよ。誰にでもそういうことしてるんでしょ。全くこれだからイケメンは。」

「してないよ。」

精一杯平気なふりをする私に暁さんは真剣な表情で言った。胸がわしづかみにされる。顔面偏差値が高いのって本当にずるい。

「う、うっそだ~。」

「キスは好きな女にしかしない。」

「す、きな・・・?」

ちさ(ヽヽ)、お前のことが好きだ。本気だから。俺と付き合ってほしい。」

「!?!?!?」

「すぐに返事しなくていいいから。出ようか。」


その後、暁さんがタクシーで家まで送ってくれた。彼は送り狼になることもなく、『部屋の電気点いたら帰るから。』と言われた。2階の部屋の電気をつけて窓から外を見るとタクシーが走り出すところだった。
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