王子と社長と元彼に迫られています!
優悟は私の手を掴んだまま自分のおでこを私のおでこにくっつけてきた。

「・・・熱ないだろ。」

「・・・う、うん、ないね。」

何、この感じ・・・優悟相手なのにやたらと動揺してしまう。そんな自分に戸惑っていると彼は私からパッと離れシンクの前に立った。

「このスポンジでいいんだよな?」

「・・・うん、ありがと・・・。」

ダークネイビーのスーツの上着を脱いでライトブルーのシャツの腕をまくり洗い物をする優悟の後ろ姿を見る。身長は平均くらいだろうか。紬くんや暁さんと比べると低い。私も平均的な身長だから並ぶとちょうどよかったんだよね。暁さんと同じ黒髪ではあるけれど癖のない素直な髪。あれ、肩結構がっしりしてたんだ・・・3年付き合っていたのに今気づいた。

「・・・なんだよ、具合悪いんだから寝てろよ。」

「え、あ、いや、もうよくなったから。あ、洗濯物でも畳もうかな。」


その後、二人で家にあるものを適当につまみながらテレビを観たり漫画を読んだりして、優悟は21時くらいに帰っていった。

一緒にまったりしていると彼と別れたことも、紬くんと暁さんに出逢って告白されたことも、そして優悟が私に起きたことを夢で見ているというのも、それこそ全部夢だったかのように錯覚してしまいそうになる。

けれど、やはり何かが違った。優悟はシャツ姿のままで、いつもこの部屋で着ていた部屋着───国民的ファストファッションブランドのフリース上下───を着ることはなかった。ちょうど今日は出張帰りでキャリーケースもあるし、部屋着を始めとする彼の荷物(あまりないけれど)を持って帰るのかな、その為に来たのかもとも思ったけれど、持ち帰らずそのまま置いていった。捨ててくれ、ということなのだろうか。
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