王子と社長と元彼に迫られています!
柚香の部屋みたいにお洒落に飾る以前に不要なものを捨てる必要がある。着ない服や使わないコスメ、読み終わった雑誌やgetするだけで満足したゲーセンの景品を分別してまとめた。

一方優悟からの誕生日やクリスマスのプレゼントや彼がこの部屋で使っていたもの───部屋着に枕、食器など───は紙袋にひとまとめにしてクローゼットの上の棚にしまった。

彼がここで使っていたものを勝手に捨てるわけにもいかないかなと思ったけれど、捨てていいのか聞くのもためらわれた。自分から別れを切り出したのに、いまいちスパッと切り捨てることが出来ない。こうやって面倒なことから逃げてしまうところも改善しなくてはいけないんだろうな。

その他の優悟との思い出があるものも捨てるかしまうかした方がいいのかもと思ったけれど、そう思ったら洋服や漫画や食器類、テレビやベッド、むしろこの部屋自体に彼との思い出がある。でも会社からも近いし、修羅場になって別れたわけでもないので引っ越したいとは思わなかった。

綺麗になった部屋を見渡すととても気分が良かった。あとはもうちょっとおしゃれな感じに出来たらいいな、ローテーブルの前に座り、ビールを飲みながら思う。

優悟が私に起こったことを夢で見てしまう、ということについてはとてもじゃないが信じられなかった。でも彼が探偵を雇って私を監視するなんてどうしても思えなかった。

世の中には科学で説明できない不思議なことが色々とあるのをテレビとかで観たことがあるし、もしかしてそういう能力が存在し、優悟も覚醒したのかもしれない・・・そう思ってスマホで調べようとすると、画面に美しい幾何学模様のアイコンと『紬』という名前が表示され、無意識に体がビクッとなる。

出なくても明日の朝の電車で顔を合わせることになる。思いきって、応答している受話器のイラストが書かれた緑色の電話アイコンをタップした。
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