王子と社長と元彼に迫られています!
卓上にはたくさんの造花が種類ごとに器に入って置かれていた。

「あいつより先に俺のことを好きにさせる。」

「!?・・・っ!?」

私の唇が言葉を発する前に暁さんの唇がその動きを優しく止めた。展望室での紬くんの激しいキスとは対照的な穏やかで丁寧なキス。まるで進む先を見据えて段階を踏んでいるような・・・。戸惑う気持ちがキャンドルのように熱せられて少しずつ溶かされていくみたいだった。

唇に十分に触れてからその熱い唇で耳たぶに触れられ、次にミルキーホワイトのハイネックニットの首部分を押し下げられた時、ふと優悟の顔が頭に浮かんだ。

───そうだ、夢だか防犯カメラだかなんだかわかんないけど、もしかしてこれも見られちゃうの!?

夢見心地から突如我に返り、ニットを握る暁さんの手を掴む。

「あの、ここって防犯カメラとかあります?」

「?ないよ?カメラは廊下にあるし、重要な資料は全部社内にあるからな。ここにあるのは会社のパンフレットや色々な参考図書、あと花の材料とか誰に見られても困らないものばかりだ。」

「そうですか・・・。」

「鍵も閉めたし、誰かに見られることはないから安心しろ。」

彼はそう言って再びニットを下げようとした。

「あ、あの、私上司に資料を持っていかないといけないし・・・。」

「・・・ああそうだ、悪い。仕事中だったな。つい我を忘れてしまった。お前のこととなると自制がきかなくなる。」

暁さんは照れたようにそう言って私を起こしてくれた。

「・・・えっと、紬くんにも話したんですけど・・・。」

「ん?」

「お気持ちは嬉しいっていうかむしろ恐れ多いんですけど・・・私、彼氏と別れたばっかりで今は誰とも恋愛するつもりはないんです。」

「・・・言ったろ?返事は急がないって・・・いや、ライバルがいるとわかってついつい焦って襲いかかってから言っても説得力ないけど・・・。」

暁さんはそう言って頬をわずかに染めてぽりぽりと頭を掻いた。

───あ、可愛い・・・ギャップ萌え・・・。

胸がキュンと鳴るのを感じた。最近私の胸はやたらキュンキュンしていてとても忙しかった。
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