王子と社長と元彼に迫られています!
「・・・あの、なんであんなに造花があったんですか?」

私が自社の倉庫から資料を持ってくるのを暁さんは待っていてくれた。廊下を歩きながら聞いてみる。

「うちは経営コンサルに付随したサービスも色々行ってるんだ。顧問をしている会社や店に置くフラワーアレンジメントを作ったり、その会社の取引先に祝い事があって花を贈りたい時にうちで作ったり出来る。うちのメンバーは皆経営の他にも何かしらの豊富な知識や高いスキルを持ったやつばかりだ。法律、語学から料理や花までな・・・法律関係の資格を持ったやつ・・・いわゆる士業のやつはうちのオフィスで事務所を開いている。」

そう言えば前の会社で営業をしまくっていた時、法律事務所の住所が『株式会社〇〇内』だったのを何度か見たことがあった。

「まぁ、俺を始め、一筋縄じゃいかない扱いにくいやつが多いが・・・実はあの星谷紬もうちの会社に迎え入れたいと密かに狙っていたんだ。」

「え!?紬くんを!?」

「会社にホームページは不可欠なのになかったり、あってもショボかったりする会社が多いからな。作ろうと思ってもホームページ制作会社が多過ぎてどこに頼めばいいかわからないで躊躇していたりする。うちはコンサルした会社には格安でホームページの作成や管理を行ってるんだ。最近その需要が多くてwebデザイナーを増員したいと思っていた。以前話した時、あいつは経営にも興味があるようだったし、まだまだ若くて頭も切れそうだったからな。」

「引き抜きってやつですね。紬くんすごい・・・。」

「まぁ、ライバルは強ければ強いほど燃えるからな。」

暁さんが不敵な笑みを浮かべた時、エレベーターの前に着いた。台車に荷物を乗せた他社の人がいたので会話はそこで終わった。

暁さんも紬くんも見た目だけじゃなくて中身まで私とは違う世界に住む人なんだなと改めて思った。でもそんな二人が見せる心の熱さや弱さが私の心をツンツンと引っ張るのだった。

それに二人に触れられても嫌悪感を感じたりはしない。彼氏以外とキスをしたことなんてなかったのに・・・。イケメンだから?今までこういう出来事がなかっただけで、実は私って隙だらけの軽い女なんだろうか・・・。なんだか凹んでしまい、ため息が出た。
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