王子と社長と元彼に迫られています！

「べ、別にいいじゃん。夢なんだし・・・私達別れたんだし。」

ドキドキと彼の体温の心地良さに浸ってしまいそうになり、わざと突き放すように言うと腕を離され、体が離れた。

「・・・そうだよな・・・ごめん。」

肩を落としてしゅんとしてしまった優悟の姿にまた胸をくすぐられてしまい、慌てて彼に背中を向け、無駄にベッドサイドのチェストの引き出しを開けたり閉めたりして、意識的に少し苛立った声を出す。

「てか、今日は何しに来たの？また急に。来る時は連絡くらい・・・。」

「ぷっ、なんだそれ、実家の母かよ。」

「あ、ほんとだ。あはは。」

優悟につられて思わず笑ってしまう。

───あれ？でもこれじゃ、これからも優悟がうちに来るみたいじゃない？

「チーズフォンデュ用のチーズが安かったんだよ。千咲の家にチーズフォンデュマシンあったなと思って。うちの商品の。」

「チーズフォンデュなんて鍋とかでも出来るじゃん。」

「あれ専用マシンだからなかなか使う機会ないし、使える時使わないともったいないだろ。トイレ行ってから持ってくる。キッチンの上の棚だよな。」

優悟はそう言って部屋を出て行った。別れてからというもの、彼は今まで私に見せて来なかった表情ばかり見せ、言って来なかった言葉ばかり言う。

───今更どうして・・・？もしかして私が思うよりも彼は私のことを好きでいてくれたの？それとも夢で他の男性とのシーンを見なければこんな風にはならなかった？

そんなことを考えているとスマホが震えた。見てみると紬くんからのメッセージだった。

「！？！？」

思わず窓に駆け寄る。握りしめたスマホの画面には『今、ちぃちゃんのマンションの前にいるよ♪』というメッセージが表示されていた。

急いで窓を開けてみると、紬くんが笑顔で手を振っている。

「どうした？」

背後で優悟の声がした。

───まずい！優悟は紬くんの顔を知ってる───！