王子と社長と元彼に迫られています!
───こ、これは『彼シャツ』!!この状況はどう見たって、行われた後───!!!そして更にそれを優悟に見られちゃった!!!

体ががくがくと震えてくる。

「どうした?寒いのか?温めてやろうか。昨日みたいに。」

暁さんは私を愛おしそうに抱きしめてきた。胸がギュッと押し潰されて彼の体に押し付けられる。素肌の温度が私が着ている彼のシャツ一枚のみを隔てて伝わってくる。

「・・・俺、人にあんな姿見せたの初めてだ。」

───ど、どんな姿!?

「ちさ、すごく可愛かったよ。」

───な、何が!?

昨晩何があったのか聞きたいのに、私の口は金魚のようにパクパクするばかりで声にならない。私は優悟と電話が繋がっていることも忘れ、頭を木魚のようにポクポクと叩いて昨晩のことを思い出そうとした。

ええと、昨日の夜はボタンをつけた後、それぞれホテルに帰ったら寝る前に飲もうと思って買っていたお酒を一緒に飲むことになって、暁さんが起業した時の話を聞いて───。


「ビジネス系の専門学校を卒業して20歳で就職して23歳で独立して起業した。就職した会社の採用面接の時にいずれ独立したい旨を伝えてたんだ。独立する人が多い会社だったし、それを応援してくれる会社だった。会社に籍を置いたまま起業することも出来たけど、それだと『独立』って言えない気がして。今思えば青かったっていうか、甘かったっていうか。俺ならフリーになってもやっていけるって根拠のない自信があった。」

「・・・すごい。」

「最初は退職金や貯金もあったし、すぐに何件か顧問契約が取れたので焦りはなかった。でも、そこから客が増えずどんどん貯金が減っていって底が見えてきた。将来起業したいと思い始めた高校生の頃からコツコツと貯めてきた貯金もなくなるのはあっという間だった。」

「・・・!」

暁さんに貧乏イメージが全くないので驚いてしまう。
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