王子と社長と元彼に迫られています!
こういうところに来るのも優悟に服を脱がされるのも初めてだった。いつもはキスから彼が私の体に触れ、頃合いになると『脱いで。』と言われ、それから本番、という流れだったから。

でも今日は今までとは全然違った。私が何かをすることはなくて優悟が全てしてくれた。まるで初めて体を重ねるみたいに私に触れる彼に戸惑いつつも嬉しかった。有り余る熱と私を求めてくれる気持ち。それに身を委ねるとあまりにも心地が良かった。

しかし、いよいよ、となった時に暁さんのことを思い出して涙が浮かんできてしまった。暁さんに対して好意はある。でもそれは今すぐ一つになるほどの気持ちではない。それなのにお酒の勢いで体を重ねてしまった自分の軽率さに今更猛烈な嫌悪感を抱いた。昨日と今日で別の男性と繋がろうとしている自分がすごく汚く思えた。

「・・・ごめん、嫌だったよな。俺達別れたのに。」

優悟が優しく涙を拭ってくれた。

「違うの・・・優悟は悪くない、私が・・・。」

でもずるい私はその先を言うことは出来なかった。

「・・・後ろから抱きしめて寝るのはいい?」

「・・・うん。」

背中に感じる優悟の胸の温度が心地よい。本当は私にはその温もりを受け取る資格なんてない。だって自分から手離したんだから。それなのに彼から言い出したからと言ってこんな風にぬるま湯に浸かる。つくづく自分が嫌になる。

日の出まではまだ2時間ある。もし私の仮説が正しかったら、今寝たら優悟に暁さんとのことを見られてしまう。でも、もうそれでいいと思った。私はそういう女だから。

もし優悟が私に対してまだ気持ちを持っていてくれたとしても、さすがにそんな姿を見たらいくら夢でも気持ちが冷めるだろう。むしろ恥ずかしい姿を見てもらった方がいいんじゃないかと思った。

きっともうこれで優悟とも完全にさよなら・・・そう思いながら先程まで必死で(あらが)っていた睡魔の誘いに乗って目を閉じた。
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