王子と社長と元彼に迫られています!
「・・・いいんだ。暁さんとの間に何があっても、もしも他に会ってる男性(ひと)がいたとしても。ちぃちゃんの中にある僕への気持ち、今は小さい芽でも大事に育てて花を咲かせてみせる。誰よりも先に。」

「・・・っ。」

「今まで誰かに勝ちたいとか思ったことなかった。でもちぃちゃんのことでは絶対に負けたくない。」

紬くんの純粋な気持ちが心にしみてくる。それは温かくて、眩しくて、少し痛い。

思わず紬くんの背中に手を伸ばしかけて躊躇(ためら)うと、抱きしめられている腕が緩まった。視線が絡み合う。彼の目は先を促しているように見えた。それに従って彼の背中に手を回す。しばらくして体が離れると紬くんは私の顎を持ち上げて言った。

「・・・ちぃちゃん、僕のこと、もっと好きになって。」

3回目のキスは、カラオケでの何かを目覚めさせるようなものとも、展望室での気持ちをぶつけるようなものとも違う、祈るようなものだった。

───こんなに想ってもらっているのに、私はどうして紬くんと付き合うという選択ができないんだろう・・・。


会社に間に合うギリギリの時間まで私達は抱き合ったままだった。
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