空を飛ぶ夢を見る小鳥
隣に居る男。雨宮 柊は3年生だけれど、一度留年している為、私より2歳年上である。
柊はこの学校では誰ともつるまず、常に一人でいる一匹狼だ。
この学校に何人も居る不良の生徒を一人で倒し、トップを取った男。
その理由も「取れたから取っただけ」と口にしている為、本人は何も誇りに思っていないのだろうと判断する。
欲しいと思った物は全て手に入れたいとか、手に入れてもいつまでも満足しない貪欲だ、とか。
そんなわけでもなく。
憧れを抱く者も要らずと切り捨てた柊は何故か、私だけは傍に置いている。
「…柊、あの、今日…、一人で帰ってもいい?
今日は買い物頼まれてて、」
「却下。」
「…本当に、お母さんに買い物を頼まれてるの。行かないと…」
「じゃあ、俺も連れて行けばいいだろ。」
「…、」
けれど、私だって人間だ。
いつまでも同じ人と一緒に居るのは息が詰まってしまう。
だから、理由を付けて一人の時間を得ようとしているのに、柊は私の腕を強く掴んで言い放つ。
もう、何度聞いたのか分からない。
「……そうやって、俺から逃げようとすんじゃねぇよ、小春。」
束縛の、言葉だ。
クラスメイトと話すのは駄目だ。休み時間は俺に費やせと命令をしたあの日。私はどれだけのものを失ったのだろう。
柊に捕まった事で、どれだけの人達に白い目で見られただろう。
「…お前は、俺のだろ、」
「…、うん、」
「傍に居ろ、」
思い返せば、彼との出会いは唐突だったーー。