受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される
 ひだまりのような穏やかで優しい気持ちは、監禁されている間に燃え上がり、今やレーヴの原動力になって彼女を突き動かしている。

「こんなところで、悲劇のヒロインぶっている場合じゃない!」

 レーヴはにんまりと人の悪そうな顔で笑い、唯一の出入り口である扉を睨んだ。
 おもむろにベッドの隙間へ手を入れて取り出したのは、これまでコツコツとためてきたカトラリーだ。

「さて、やりますか!」

 カトラリーを暗器のように持ち、レーヴは「フッフッフッ」と不穏な笑い声を上げる。
 まずは一本! とナイフを振りかざし、扉の隙間に突き刺した。

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