受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される
 ☆


 扉の隙間に刺さったカトラリーの数々。最後の一本が折れたのを見て、レーヴは舌打ちした。
 悔し紛れにガンガンと扉を蹴る。見た目は木製なのに、扉は傷一つ、ヒビすら入らない。レーヴはむしゃくしゃした。

「もう! もうもうもう!」

 もうもうと、牛みたいだ。逆切れして「じゃあ、闘牛みたいにやってやろうか⁉︎」と物騒なことを言い放ったレーヴは、目をギラギラさせて扉から距離を取った。

 助走をつけて、扉を蹴る!

 と、その時だった。レーヴの足が届くよりも先に、扉が開く。
 刺さったままだったカトラリーが床に落ち、金属音が室内に響き渡る。
 どういうことだとレーヴが目を見張っていると、蹴るために突き出していた足を掴まれ、放り投げられた。
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