受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される
 そうとは知らず、レーヴは皺の寄ったスカートをなんとか見栄え良くしようと伸ばしてみたり、青年を見ては恥ずかしそうに目を伏せたりと忙しない。
 視線が絡むたびに慌てて目を逸らすせいで、青年が残念そうに苦笑いを浮かべているなんて、気づく余裕もないらしい。

「あなた、ちょっと……」

 素直に耳を寄せた夫に、マリーはささやいた。

「レーヴさん、思っていたより好感触ですわ」

 マリーの言葉に、ウォーレンは静かに頷いた。

「でもちょっと、純粋すぎるのかしら……? うっかり悪い男に騙されそうで心配になりますわ」

 ウォーレンは深く頷いた。
 昨日の帰り際に見たレーヴはあんなに面倒そうにしていたのに、今の彼女はまるで初恋すら未経験の初々しい乙女……いや、幼女のようである。
 いくら相手が美形とはいえ、狼狽すぎだ。彼女の年齢を考えればもう少し冷静に対処できそうなものだが、とウォーレンは首を傾げる。
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