受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される
 だが、首に抱きついて泣いているレーヴを見ていると、彼女は本当に自分を嫌いになったのだろうかという疑念が湧いてくる。嫌いな相手に、彼女はこんな態度をするはずがない、と。

 彼女のことを何年も見てきたから、わかる。
 レーヴは嫌いな相手に優しくできるほどお人よしじゃない。軍人らしい冷徹さも持っている女の子なのだ。

 考えれば考えるほどおかしなことだらけで、デュークは首を捻る。
 そこでふと視線を感じて階下を見ると、見知った人物と目が合った。

「デューク、申し訳ない!」

 ロディオンはデュークと目が合うなり、勢い良く土下座した。同時に、その隣で力なく座り込むエカチェリーナの額を、床に押し付ける。
 どうして彼らはデュークに対して謝るのだろう。彼の困惑を示すかのように、馬の耳がピョコピョコと忙しなく動き回った。
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